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最新労働判例の紹介(1)


昇格・昇進における女性差別の有無
「C電力事件」平成25年7月18日広島高裁判決


事案の概要  

  • 本件は、被控訴人会社(Y社)の女性従業員である控訴人(X)が、職能等級の昇格及び一定の職位への昇進において、Y社から女性であることを理由に不当な差別的な取扱いを受けて、本来あるべきものより低い職能等級及び職位にされているなどとして、Y社に対し、
    (1) 不法行為に基づく損害賠償請求(慰謝料及び適切な時期に昇格・昇進していた場合に得られたはずの賃金との差額)、(2) 過去の一定の時期から現在まで、一定の職能等級上の地位にあることの確認、(3) 過去の一定の時期から現在まで、主任の職位にあることの確認、を求めて訴えた事案。

争点  

(1) 過去の昇格に対する確認の利益の有無
(2) 男女差別的人事の有無

第一審(広島地裁、平23.3.17判決:原審の判断)  

  • 第一審は、Xの過去の一定の期間に一定の職能等級や職位にあったことの確認を求める訴えは、いずれも確認の利益を欠き不適法であるとして、これを却下し、その余の請求をいずれも棄却したので、Xが
    本件控訴したものである。

控訴審(高裁)の判断  

(1) 控訴審においても、原審と同様、Xの訴えのうち、過去に主任1級の職能等級にあったことの確認及び
 過去の一定期間に管理3級の職能等級にあったことの確認を求める部分は、不適法な訴えとして却下を免れないとした。
(2) 男女差別の有無について

  • 平成20年の時点で、Xと同期同学歴の事務系男性従業員について、 ー臟ぃ欝薜幣紊凌η重級になっている者の割合が90.4%(同女性従業員は25.7%)、◆ 同男性従業員で初めて主任1級に昇格した者の年齢が36歳、同男性従業員の過半数が40歳までに主任1級に昇格(同女性従業員で初めて主任1級に昇格した者の年齢は41歳)していること、 職能等級昇格前の在級年数も同女性従業員のほうが同男性従業員よりも長い傾向にあること、その結果、Xと同期同学歴の事務系女性従業員の平均基準労働賃金額は、同男性従業員の平均額の88.1%、年収換算で85.6%にとどまるとし、一定の範囲で男女間に昇格や賃金の格差が事実として存在していることを認めた。
  • しかし、職能等級の昇格は人事考課(業績考課、能力考課)により決まるところ、人事考課の基準等でも、男性従業員と女性従業員とで取扱いを異にするような定めはないし、 /融考課の評定基準が作成及び公表され、◆”渉蠎圓暴性も登用されており、研修を実施するほか、 第一次評定者だけでなく第二次評定者も評価を再検討していること、ぁ〃覯未鬟侫ードバックしていることなど、評価の客観性を保つ仕組みがとられていること、同じ男性間にも、昇格や賃金額に差があるのであって、男女間で、層として明確に分離しているとまではうかがわれないとした(さらに、女性従業員の管理職就任を敬遠する傾向、自己都合退職が少なくないこと、旧女性保護法「深夜業務の原則禁止、時間外・休日労働の制限」などの事情もうかがわれるとした)。

(3) Xに対する人事考課

  • 他方、Xの平成17年度から平成19年度までの人事考課は、いずれも業績の考課(仕事の仕方等)については高く評価されているが、能力評価については、責任・協力という面、その中でも職場の一体感やチームワーク向上に対する能力・成果には問題があると評価されており、同期同学歴の男性従業員と比較して低い職能等級・給与だったこと(まだ主任の職位に昇進できなかったこと)は、昇格・昇進に必要な能力・成果が得られなかった結果であるとして、Y社の人事評価においてXが女性であることを理由とする昇格・昇進に関して差別があったとはいえないと判断している。
      結論として、Xの現在の地位に対する確認、及び不法行為に基づく損害賠償請求のいずれも棄却した。

実務上の留意点  

  • 本件の判決において、控訴人Xが昇格・昇進に対する男女差別を主張したのに対して、判決では、被控訴人会社Y社の人事考課制度が評価の客観性を担保する仕組みがなされていること、すなわち
    • 人事考課基準が公表されていること、
    • 評定者に女性も登用し、評価者研修も行われていること、
    • 第一次評定者だけでなく、第二次評定者も評価を再検討していること、さらに
    • 評価結果をフィードバックしていること等々

により客観性が担保されており、Xの仕事の評価は高いが、協調性においてマイナス面が大きいことを踏まて、Xの昇格・昇進が同期同学歴の男性従業員よりも遅くなっていることをもって、女性であることを理由とする差別がない旨判事しています。

  • 人事考課制度は、一般に会社の人材を効果的かつ効率的にマネジメントするために、
    • 処遇の決定根拠を明確にすること。すなわち、社員1人ひとりの職務遂行上の実績及び能力又は行動等を適正に把握し、公正に処遇(昇進、昇格、昇給及び賞与など)するための根拠とすることを目的の1つとしています。また、
    • 社員を指導・育成するためのポイントを明確にすること、つまり社員1人ひとりの強み・弱みを診断し、それに対する必要な対策を設定し、各社員の能力開発・成長を促す、いわば「人材育成」に活用することがもう一方の目的といえます。
  • それだけに、評価者の評価基準の理解・解釈や捉え方が一定のレベルに達していることが重要であり、評価者研修も大事な視点となってきます。各評価者が「陥りやすい7つの心理的偏向」という落とし穴に落ち込まないようにすることが何より大事なポイントになります。

人事考課において陥りやすい7つの心理的偏向

どれほど公正に評価しようとしても、人は無意識にある傾向に陥りやすい特性を持っていると言えます。これを心理的偏向といい、次の7種類があります。

  • ハロー効果⇒ ハローとは「後光が差す」という意味の「後光」のことであり、ハロー効果とは、何かある特定項目で際立っているような場合、他の評価項目にも影響することです。
  • 中央化傾向(又は中心化傾向) ⇒評価者が、「きわめて良い」又は「きわめて悪い」といった極端な評価を避けようとして、評価点を
     真ん中に集めてしまう傾向のこと。評価者が、当たり障りのない評価で波風が立たないようにしたいという気持ちの表れでこのようになります。
  • 寛大化傾向 ⇒ 評価への批判や反発をおそれ、また対象者(部下)への気遣いから、評価がついつい甘くなりがちな傾向のこと。甘く評価するのは簡単だが、部下の成長を止めてしまう危険性がある。
  • 厳格化傾向(又は酷評化傾向) ⇒ 辛すぎる評価をしてしまう傾向。寛大化傾向の反対だが、評価者が自分にかなり自信を持っている場
    合や能力の高い人が、自分を基準にして評価する場合に起こりやすいとされています。
  • 期末誤差 ⇒ 会議などで、会議中まったく発言のなかった人が、終了間近になって、挙手したり、一言発言したりするとその言動が周囲の頭に強く残ってしまい、少なからず影響を受けてしまう傾向
  • 論理誤差 ⇒ 事実をしっかり確認・分析せずに、推論を先行させて部下を評価してしまう傾向。例えば、「遅刻クセのある人は絶対ルーズな性格だ」「彼は知識が豊富なので、スキルも優れている」などと、自己流の理屈で対象者の人格を決めつけ、評価してしまうこと。
  • 対比誤差 ⇒「あの人と比べてどうか」と比較評価すること。絶対基準ではなく、「誰か」を基準において対象者を評価してしまうことです。そのため、実際よりも過大に、又は過小に評価してしまう危険性がある。

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