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労務管理情報(5)


猪(い)〜年(とし)社労士@小野寺(おやじ)の労務管理情報
第5回 働き方改革で注目を集める勤務間インターバル/テレワークの実務対応(その3)


テレワーク 導入の効果と実施のためのポイント  

テレワークへのニーズが高まっている背景  

  • 日本におけるテレワークは、1980年代のNTTによるIN(Information Network System)の実験から始まった。
    「テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」
    のことです。テレ(Tele)というのは、テレフォンやテレビジョンのテレと同じで、「離れた」という意味です。これとワーク(Work)を合わせた造語がテレワークです。
    要するに、本拠地のオフィスを離れ
    てICTを活用して仕事をすることがテレワークです。
  • 具体的には、自宅で仕事をする在宅勤務、移動中の交通機関や喫茶店などで仕事をするモバイルワーク、会社が自社の社員のために設置した部門共有型のオフィスで働くサテライトオフィス勤務などです。
    このテレワークが今、政府や民間企業に注目されています。テレワークが「働き方改革」や「ワークスタイル変革」の切り札になるからです。
    2016年2月の内閣官房記者会見で、安倍首相は、「働き方改革」が「今後3年間の最大のチャレンジ」だと述べています。
  • 一方で、「ワークスタイル変革」という言葉が6,7年前から民間で普及しています。昨年も「ワークスタイル変革」をテーマにしたイベントが、日本全国で多数開催されたが、いずれも大盛況でした。
    「ワークスタイル変革」とは、従来の働き方を、情報通信技術(ICT)を活用した多様で柔軟な働き方に変革することで、生産性の向上や創造性の発揮、従業員のワークライフバランスなどを実現することです。bこれは、日本政府が推進する「働き方改革」と同義語ですが、「働き方改革」のほうは同一労働同一賃金や長時間労働の正など働き方の制度そのものを再検討することも含まれています。
  • 「働き方改革」や「ワークスタイル変革」が注目されている理由の1つは、少子高齢化の影響で、今後日本の労働力人口が大きく減少することにあります。厚生労働省の雇用政策研究会の報告書によると、今後、日本政府が何らかの施策を実施しないと、2030年には労働力人口が2010年に比べ950万人も減少すると予測しています。
    これは、日本の製造業の就業人口が約1000万人ですから、製造業の全就業者数に匹敵する労働力人口が減少することになります。このための対策として、「働き方改革」は国を挙げての重要な課題なのです。
  • もう1つの理由は、日本の生産性の低さです。日本生産性本部の「労働生産性国際比較2016年版」によると、日本の労働生産性(GDP÷就業者数)は、OECD加盟35か国中の22位であり、先進7か国の中では最下位です。したがって、働き方を大きく変えなければ、今後日本経済がじり貧になってしまうのは明らかだからです。
  • ではなぜ、テレワークが「働き方改革」や「ワークスタイル変革」の切り札となるのか。
    テレワークの「効果」としては、ゞ般垣源裟の向上、⊆勸の意識変革、社員のワークライフバランス向上による優秀な人材の採用・流出防止、ぅ灰好蛤鏝此節電、セ業継続性の確保(BCP=自然災害やパンデミック対策)などが挙げられ、多様な課題に有効です。
    要するに、テレワークによって、多様な働き方が可能になり、「働き方改革」「ワークスタイル変革」につながるものとしています。

テレワークの導入に必要な要素とは  

  • 第1の要素は、ワーカー(労働者)は、本拠地から離れたところで仕事をしますから、労務管理(時間管理、評価制度等)をどうするかということです。
    第2の要素は、テレワーク時の執務環境(VDT作業環境や家族の理解等)をどうするかということです。
    第3の要素は、テレワーク時の情報通信システム(リモートアクセス、TV会議、セキュリティー等)をどうするかということです。
  • まず労務管理についてです。テレワーク時も、本拠地と同じように時間管理をするのか、或は事業場外みなし労働時間制度を導入して、在宅勤務やモバイルワークの時は所定労働時間働いたとみなすのかということが課題になります。
    日本での在宅勤務は、ほとんど週に1,2日であるため、通常の時間管理を適用する事例が多いようです。
    また、部下がサボッテいるのではないかと気にする上司もいます。
    テレワーカーが勤務開始時にその日の実施項目を上司に連絡し、終了後にその日何をしたかを連絡することによって、上司もその日の業務量と進捗状況をある程度把握できます。
    加えて、テレワーカーの評価をどのようにすればよいかということも課題です。できるだけ、社内全体を成果型の評価制度に変える工夫も必要です。ただし、週に1日,2日のテレワークであれば、外出や出張で社内にいない場合と変わりませんので、評価制度を大きく変える必要はないかもしれません。
  • 労務管理に関しても、できればテレワーク勤務規程を作成して、在宅勤務やモバイルワークの際のルールを明確化することが望まれます。
    テレワーク勤務規程を作成するに当たっては、厚生労働省が設置している「テレワーク相談センター」(電話:0120-91-6479)というテレワークの相談窓口に相談することをお勧めします。無償でテレワーク導入のアドバイスを受けられます。
  • 次に「執務環境」です。在宅勤務時の執務環境に関しては、厚生労働省の「VDT作業のガイドライン」を参考にするとよいでしょう。
    長時間座って仕事をする場合、和室のこたつやリビングの低い椅子だと腰を痛める可能性があります。できれば、オフィス仕様の椅子や机を用意することが望まれます。
  • モバイルワークの場合、コワーキングスペースや共用型のサテライトオフィスを自社のサテライトオフィスとして活用するのももう一つの方法です。最近は、カラオケ店と提携して昼間の空いている時間帯にカラオケボックスをオフィスとして利用することを許容する会社もあります。
    また、テレワーク導入に当たって、本拠地のオフィスをフリーアドレス化することによってオフィススペ−スを節約し、コスト削減を図る企業もあります。
  • 3つ目に「情報通信システム」です。テレワーク導入に躊躇する理由のトップが「情報漏えいが心配」という調査結果があります(平成27年度総務省「通信利用動向調査」)
    。確かに社外で仕事をするわけですから、そこから情報が大量に漏えいすることが懸念されます。しかし、現在はリモートデスクトップといって、手元のパソコンから会社で普段使っているパソコンを捜査し、捜査結果は会社のパソコンに保存されるというシステムがあります。
    また、大量のデータをダウンロードできない設定も可能ですので、セキュリティ面は安心です。利用料も1クライアント当たり月額千円代のシステムもあり、中小企業でも導入しやすくなっています。
  • また、会社やデータセンターのサーバーにデスクトップがある仮想デスクトップ(VDI)という方式もあります。この場合、手元のパソコンは記憶媒体のないシンクライアントパソコンを利用しますので、デー
    タ漏えいの心配はありません。さらに、クラウドサービスを利用することもよいでしょう。
    メールやスケジューラー、チャット、プレゼンス管理、Web会議、クラウド上のストレージなどがワンパッケージになっているサービスもあります。利用料も1クライアント1000円程度のサービスもあります。
  • いずれにしても、セキュリティを確保して、安全に社外で仕事できる環境を構築することが必要です。

テレワーク導入のプロセス  

  • テレワーク導入に当たっては、ほとんどの企業がプロジェクトチームをつくって対応しています。経営規格部門、人事部門、情報通信システム部門、総務部門、テレワークを実施する部門などからチームメンバーは構成されます。

テレワーク導入のプロセス  

プロジェクトチーム編成
(経営企画、人事、総務、情報システム、対象部門)
全体方針の決定
(目的の明確化、基本方針策定、社内合意)
ルールづくり
(対象範囲、頻度、申請、労務管理、費用負担)
ICT(情報通信技術)環境の構築
(セキュリティシステム、セキュリティガイドライン)
社内説明会・社内研修
(導入の意義、システム利用方法、ルールの周知)
トライアル実施・レビュー・対策実施
(レビュー項目の明確化、アンケート実施)
本格導入
  • 上記の図は、テレワーク導入のプロセスを示したものです。プロジェクトチームによる推進体制の構築に始まり、全体方針の決定、ルールづくり、ICT環境の構築・セキュリティ対策、社内説明会・教育の実施、施行導入と効果測定、本格導入という流れになります。
  • 全体方針の決定では、テレワーク導入の目的の明確化、基本方針の策定、社内合意形成が実施項目です。
    目的の設定に当たっては、企業の経営課題や経営方針に合っていることが重要です。
     ルールづくりに当たっては、テレワークの対象者を誰にするか、頻度をどうするか、申請をどうするか、労務管理をどうするか、費用負担をどうするか、などを決めます。
  • はじめは育児・介護を担う社員をテレワークの対象にしたとしても、できるだけ早い時期に多くの社員を対象にすることが望まれます。それは、社員間の不公平感を解消するためです。
    テレワークの申請も、当初は1週間前までに上司に申請というルールにしたとしても、慣れてきた時点で前日までに申請するように、ルールをより柔軟にしたほうが利用者の使い勝手がよくなります。
  • テレワークの頻度も、最初は週1日程度と決めても、日数を増やしていくことが望ましいと思います。育児期の社員であれば、夏休みや冬休みに子どもを一人で放っておく期間をできるだけ短くしたいというニーズもあるからです。
  • テレワークの場所も介護のために実家で働くことを許容したり、自宅が必ずしも働きやすい環境でない場合は、コワーキングスペースで働いたりすることを許容することも望まれます。
    通信コストや光熱費などのコスト負担は、利用者の自己負担とする場合が多いようです。利用者にとって、メリットの大きい働き方であり、利用者が自ら望む働き方だからです。
    ただし、テレワークが週に3日とか4日ななった場合は、通勤コストが減る分を光熱費として補助するという企業もあります。できれば、テレワーク勤務規程にこれらの内容を明記することが望まれます。
  • ICT環境の構築に当たっては、まずセキュリティをどのように確保するかが重要です。先に述べた様々なICTのシステムを活用することによって、適正な予算で安全なシステムを構築することが可能になります。
    システム面だけではなく、会社で策定しているセキュリティのガイドラインなどをテレワークの場合もしっかり遵守することの再確認が必要です。
  • 社内説明会、社内教育に当たっては、可能であれば経営トップ自らが担当することが望まれます。トップが説得することにより、テレワークの社内への浸透スピードが増します。
    また、「部下が目の前からいなくなることによって、マネジメントができない」と言って反対しがちな中間管理職も説得できます。こまごまとしたルールについては、Web教育を使ってもよいでしょう。
  • テレワークのトライアルに当たっては、どのようなことを検証するかをあらかじめ明確にしておくことが必要です。トライアル期間は、半年から1年という場合が多いようです。
    レビューに当たっては、テレワークを実施した本人だけでなく、上司や同僚にもアンケート調査を実施することが望まれます。レビューした上で、対象範囲やルール、ICT環境などの改善点を明確化し、改善策を実施して本格導入していくことが良いと考えます。

政府や自治体による支援制度  

テレワーク助成金制度  

番号項目内容
1目的終日在宅で就業するテレワークに取組む中小企業事業主を支援
2期待効果労働者のワークライフバランスを推進、育児や介護と仕事の両立支援
優秀な人材の確保、災害対策(BCP)
3対象事業主テレワークを新規で導入する中小企業事業主(範囲は以下の通り)
小売業ー資本金5千万円、常用雇用労働者50人以下
サービス業―資本金5千万円、常用雇用労働者100人以下
卸売業―資本金1億円以下、常用雇用労働者100人以下
その他―資本金3億円以下、常用雇用労働者300人以下
4助成内容-テレワーク用通信の導入・運用、-保守サポート料・通信費、-クラウドサービス利用料、-就業規則等の作成・変更、-研修、周知、-外部専門家によるコンサルティング
5成果目標の設定評価期間に1回以上、対象労働者全員に、終日在宅又はサテライトオフィスで就業するテレワークを実施させる
評価期間において、対象労働者が終日在宅又はサテライトオフィスでテレワークを実施した日数の週間平均を、1日以上とする
6目標の評価期間1か月〜6か月(申請者が決定)
7補助金額- 成果目標達成ー補助率3/4、1人当上限15万円、1企業当150万円
- 成果目標未達成−補助率1/2、1人当上限10万円、1企業当100万円
8開始2017年4月1日
9申請先テレワーク相談センターTel 0120-91-6479

テレワーク導入の留意点  

  • テレワークは、様々な効果を期待できる「働き方改革」「ワークスタイル変革」の切り札ではあるが、これまでの多くの企業での導入実態を見ると、テレワーク導入の成功要因は、〃弍張肇奪廚龍力な支援を得ること、対象者を拡大すること(最初は限定していたとしても)、C羇峇浜職にも体験してもらうこと、せ纏のやり方を変えること、等が挙げられます。
  • 1番目に、「経営トップの強力な支援を得る」ということです。
    ボトムアップであっても、トップの支持がなければ、制度を維持するのは困難です。
    必ずといってよいほど、中間管理職が「目の前から部下がいなくなると、マネジメントできない」とトップに訴えます。このとき、トップが毅然として、テレワークの意義について説得することが重要です。
  • 2番目の留意点は、「対象者を拡大する」ということです。
    育児・介護を担う社員だけを対象とすると、本人たちも自分たちだけ特別扱いされているということで、肩身の狭い思いをします。結果として、在宅勤務を選択しづらくなります。また、他の社員も不公平感を抱きがちです。可能であれば全社員を対象にすることが望ましいといえます。
  • 3番目の留意点は、「中間管理職にテレワークを実体験してもらう」ということです。
    テレワークの導入に反対しがちの中間管理職に率先してテレワークを実体験してもらい、離れた部下をいかにマネジメントするかを工夫してもらうのです。中間管理職が腑に落ちれば、テレワークの普及は一気に加速します。
  • 4番目は、「仕事のやり方を変える」ということです。
    テレワークには、ペーパーレス化が必須です。また、業務プロセスも変える必要があるかもしれません。決済も電子化しないと、テレワークによって決済が遅延しかねません。ICTを有効活用して、仕事のやり方を変えることが、テレワーク成功の秘訣であるといえます。

 

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